塾の経営において近年、少子高齢化やYouTubeなどの無料教材の台頭など、環境の脅威にさらされることが増えてきました。自塾を運営するにあたって、安定的に集客し、売上を向上させるためには、マーケティングやブランディングが重要になります。ここでは、塾のブランディングのメリットやその方法などについて解説します。
ブランディングとは、独自のブランドを作り、これに対する信頼や共感を通じて、自社の価値向上や他社との差別化などを目指すマーケティング戦略の1つです。ブランドは「他と区別できるもの」のことで、ブランディングは、ブランドを作り世間に浸透させる活動すべてのことになります。
大手学習塾や有名進学塾などは、TVCMなどを利用した大規模なPR活動によって成長を続けていますが、一方で従来の集客方法で集客を図っている中小塾や地域密着の個人塾などは厳しい状況にあります。多くの学習塾の中から選ばれるためには、競合だけでなくいかに差別化を図れるかがポイントになります。そのために、ブランディングによる差別化を進める必要があります。
進学塾の株式会社湘南ゼミナールは、1978年に塾を創業し、当初より、生徒・講師の双方にとって「楽しい塾」であることを大切にしてきました。そして2023年、創業から45年という節目を迎え、それまで以上に「勉強の楽しさを通して、生徒の可能性を最大限に引き出したい」という思いを込めてブランドパーパスを一新しました。それは「楽しく学ぶ毎日が、君をトップ校へ導く」です。
そして、今後さらに多くの生徒に「学ぶことの楽しさ」や「確かな学力と自信」を育んでいってほしいという願いを込めて、新たなブランディング活動をはじめ、2023年10月17日に公式WEBサイトをフルリニューアルしています。
参照:PRIMES公式HP(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000085.000045711.html)
神奈川県を中心に学習塾を運営する株式会社創英コーポレーションは、企業規模が急速に拡大していく中、120名を超える社員の理念に対する理解や価値観の統一が困難になりました。依頼を受けたブランディング会社の株式会社ハルは、企業理念の定義を明確にし、会社の存在意義や使命、そのための行動指針を言語化することが重要であると考えました。
そこで、まず株式会社創英コーポレーションの強みや理想とする仕事の形について、カスタマイズしたブランディングフレームワークを基に議論を重ね、会社員も巻き込んだワークショップを定期的に実施しました。そして約2年かけて、理念に込められた想い、使命や提供価値、行動指針を明確にし、全社員へ浸透させました。
理念などをまとめたものは「マインドブック」として冊子にし、全社員に配布。さらに、社内の動きを全社員に発信するため、社内報を発刊しました。社員からは、「自分たちが何のために仕事をしているのかを明確に理解できた」と喜ばれました。
参照:株式会社ハル公式HP(https://harugakita.co.jp/project/002/)
競合他社の現状やトレンド、市場規模や成長性など、学習塾ビジネスの環境をつくっている要素にはさまざまなものがあります。まずはフレームワークを使って、学習塾ビジネスを取り巻く環境や、現在置かれている状況を分析することが重要です。分析方法としては、「PEST分析」「3C分析」「SWOT分析」が有効な方法です。自社が市場の中でどの立ち位置にいるかを把握します。
新規で塾を開業するにあたって、塾を立地する予定の場所から一定の範囲、たとえば半径5km圏内などを商圏エリアと設定し、そのエリアの居住者の属性や傾向などから、市場規模や地域特性をグラフなどで可視化します。分析には国勢調査や商業統計などの統計データを用います。これにより、人口や世帯、世帯特性、年収特性などを可視化できます。
自社に適したターゲットを設定します。ターゲットの設定には、「STP分析」が有効なフレームワークです。この分析では、以下の3つの要素があります。
上記のうち、セグメンテーションとターゲティングによりターゲットを設定します。
設定したターゲットに向け、サービスや学習環境、行われる講義など、どんな価値を提供したいのか、どんなニーズに応える塾にするのか、「コンセプト」を構築します。自塾の強みに合ったコンセプトを設定する必要があるため、現状分析の他、ターゲット設定で把握した「ポジショニング」を活用します。競合塾が提供できていない、自塾独自のサービスや提供価値を考えて構築しましょう。
これまでの分析をすべて終えると、「市場の現状」「自社のポジショニング」「競合塾の分析」「狙うべきターゲット」が揃います。これらを総合的に判断したうえで、最適なアピール方法を考えます。アピールには、以下の2種類の方法があります。
ブランディングが成功すると、自然とターゲットに近い生徒が集まるようになってきます。たとえば「○○○高校受験といえば」というブランドを確立できれば、その高校を受験したいと考えている生徒の入塾希望が増えます。生徒同士や親同士の口コミが相乗効果となり、さらに集客できるようになるでしょう。結果的に宣伝コストをあまりかけなくても集客できるようになり、売上増加につながります。
ブランディングが成功すれば、競合塾との差別化が生まれます。たとえば、「○○校の合格率といえば□□」「高校受験といえば□□」「マンツーマン授業といえば□□」といった、絶対的なブランドを確立できれば、競合塾が入り込む余地がなくなります。
ブランドが向上することにより、生徒のみならず保護者からの信頼感も生まれるため、長期で利用する生徒が増えます。また、すぐに競合塾に移ってしまうような事態を防ぐこともできます。
ブランドが確立することにより、競合塾と価格で争わなくても集客することが可能になります。価格競争に巻き込まれずに済み、安値で講義を提供したりキャンペーン価格で一時的にセールを行ったりしなくても、安定した価格で運営できます。講義内容を充実させることによって単価を上げることも可能でしょう。
塾経営において、価格競争に巻き込まれないためにも、また安定した売上を確保するためにもブランディングによる差別化は重要です。ブランディングが成功すれば、宣伝費に多くのコストをかけずに集客でき、離塾も防ぐことができます。安定した塾の運営のために、ブランディングを考えてはいかがでしょうか。
■選定条件
2023年10月26日時点、Googleにて「塾 フランチャイズ」で検索し表示された全結果のうちフランチャイズ募集がある学習塾23社と、アントレで「フランチャイズ フランチャイズ×塾・スクール」と絞り込んで該当した学習塾6社の中から、
補習塾:「WAM」……補習塾の中で唯一「本部が費用を負担し開校前から、問い合わせが30名に到達するまでWEB集客のサポートを実施。
進学塾:「現論会」……進学塾の中で唯一、生徒単価の高い大学進学を専門とするフランチャイズ。
映像塾:「松陰塾」……映像塾の中でロイヤリティが発生しない。
として選出しました。