学習塾を経営するうえで商圏分析は必要です。なぜなら、「集客活動をおこなうエリアを明確にする」「集客活動の費用効果を高める」ためです。塾開業における商圏分析のポイントを、人口・世帯と人口特性や年収特性、反響分析など項目別に解説します。
子どもが学習塾に通う保護者に学習塾を選ぶポイントについてアンケートを行った結果を見ると、自宅・学校から近い49.7%、子どもに合うカリキュラムがある44.0%、教師や教室長とのコミュニケーションが取りやすい41.3%でした。塾開業を目指すなら子どものいる家族が住んでいる戸建てやマンション、学校が近い場所が良いでしょう。
連絡手段が電話である学習塾が多くメールやLINEに切り替えていないことから、子どもの人数だけではなく物理的な距離感も重要であることがわかります。
国の統計データや企業が持つ顧客データを活用して、特定エリアの居住者の属性や傾向などから、市場規模や地域特性をグラフなどで可視化する分析のことです。商圏分析のベースは国勢調査や商業統計、商業人口、年収階級別世帯数データ、推計家計支出、リンク統計データで構成されており、商圏分析を行うと 人口・世帯、世帯特性、年収特性などが可視化されます。
まずは商圏を算出することから始めます。新規で塾を開業する際、立地する場所にはどこからどこまでのお客さんが足を運んでくれるか、その範囲を設定します。例えば半径5km圏内や車で10分圏内などの形で区切り、商圏エリアを設定します。
そして国勢調査などの統計データをもとに、商圏内の人口や世帯数などについて把握し、商圏エリアの営業時間内の人通りの多さなど、見込み客数を算出します。
次に、競合する店舗(塾)の所在地や商圏について、地図上でマッピングしてチェックします。顧客の多くは身近な店舗を比較して利用する店舗を選んでいるため、競合店舗の特徴を把握することは重要な作業です。競合店舗を調べることによって、差別化するポイントを見つけるのに役立ちます。
商圏内の競合店舗数を把握のうえ、競合店それぞれの立地や規模、営業時間、販促方法などを分析しておくと、塾の新規開業をするうえで比較検討しやすくなります。
立地周辺の交通状況や歩行者数、地形による店舗の見え方などについても、商圏分析において重要なポイントです。たとえば交通状況については、顧客が塾にアクセスするための交通手段や交通インフラを把握したり、立地周辺にいる人たちの年齢や収入などの属性もチェックします。
設定した商圏の特性を把握するには、総務省統計局が提供する「地図で見る統計(統計GIS)」などの公的な統計情報を活用することが有効です。
商圏分析をすることで、現在実施している販促のエリアに、本当にターゲットがいるかどうか、数値に表れます。たとえば、住宅地が密集していても、商圏エリア内に競合店舗が少なければ、そこに潜在顧客がいる可能性が高くなります。商圏分析は、こうしたことも浮き彫りにします。
販促費は、なるべく費用対効果が高まるように活用することが望ましいです。商圏が明確になることで、店舗(塾)の周辺にはどのような属性(年収、賃貸か一戸建ての別、年齢性別など)の人が住んでいるかが分かり、店舗(塾)周辺のエリアの中でも、特にどの辺りに潜在顧客が集中しているかが見えるようになるため、特に優先して販促を展開するべき地域が明らかになります。そこを重点的に販促すれば、費用対効果も上げられます。
「立地」は店舗(塾)を運営していく上で重要な要素になります。出店地は、自店にできるだけ有利な立地を選びたいものです。商圏分析は、事実に基づいた客観的なデータを基に候補地を比較できるため、どのエリアが自社の展開するサービスなどに有利なのかが分かり、戦略を立てやすくなります。
人口・世帯と人口特性はエリアの居住者属性全体を把握するために役立ちます。小学生を対象とした個別の学習塾なのか、中学生を対象とした高校受験のための集団型学習塾であるとか、学習塾によってターゲットが違うため、その属性の中に居住者がどのくらいいるのかを確かめることができる からです。
人口・世帯と人口特性のデータを活用する方法は、小学生や中学生、高校生といった各年齢層がエリア内でどれだけ見込めるのかをざっくり把握することです。
子どもを学習塾に継続して通わせるためには経済的に余裕がなければなりません。経済的余裕のある家庭がどのくらいいるのかを調べるために必要なのが「年収特性」です。
年収特性では、エリア内の1世帯辺りの年収高や各年収階級にどれくらいの世帯数があるのかが分かります。所得が高い低いではなく、年収特性のデータを元にして保護者や子どもたちに向けてアピールすることができます。
食料や住居、娯楽などについて消費財のカテゴリー別に、エリア居住者がどれだけ費用をかけているかを数値化したものが「消費支出特性」です。
学習塾は「教育」のカテゴリーの中に入り、教育娯楽用耐久財や教育娯楽用品、書籍・他の印刷物、教育娯楽サービスといった項目が記載されています。
消費支出特性には1世帯当たりの消費額が記載されており、指定したエリアの消費支出が、都道府県平均や全国平均と比較してどの程度上回っているのか・下回っているのかが分かります。これをベースに教育娯楽に支出が多いエリアや教育への関心度合いが高い可能性があるエリアを検索してみましょう。
「学習塾」に関連するキーワードが、エリア内のどこで検索されたかを地図上に表すことができます。キーワードで検索して出てきたデータと年齢層や年収データを掛け合わせることにより、エリア内の潜在顧客を確認することができます。傾向の度合いによって色付けされているので分かりやすいでしょう。
これを参考にして学習塾が少ないエリアを絞り込めれば、開業する場所を特定でき、効果的な顧客獲得につながります。
反響分析は地図上に利用者の住所を点で示し、顧客がどのエリアに居住しているのかを地図上で表したものです。地図を見れば川があるため橋を渡らなければならない、競合する塾があるためこの場所に開業すると顧客が獲得できないといったことが分かります。
データが目に見える形で把握できるのは地図を使った商圏分析だからこそです。反響分析は、一般的な商圏分析ツールでは操作が難しく、1ライセンスの価格も高価になります。操作も簡単で価格も手ごろなエリアマーケティングツールを利用するといいでしょう。
競合店分析は自店と競合店舗の「吸引率」を可視化し、自店がエリア内でどれだけ集客力があるのかを確認することができます。「店舗の魅力値」と、「居住地から店舗までの距離」を分析して地図上で色分けしています。
店舗の魅力値は講師の質や価格、進学実績、教室の雰囲気を見て塾を選ぶために活用するものです。利用者によって魅力値は異なるため、計測するのは難しいとも言えるでしょう。しかし、他の塾にないものが見えてくるかもしれません。それをアピールすれば顧客獲得につながるでしょう。
学習塾を開業するには「立地」は重要です。子どもたちが通いやすい自宅や学校に近いところやターゲットが多いエリアなど商圏分析を活用して絞り込めれば、場所探しの時間を短縮することができます。開業後にチラシをポスティングするときも無駄な費用をかけなくて済むでしょう。効率的に顧客を集客するには商圏分析を活用してみましょう。
■選定条件
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進学塾:「現論会」……進学塾の中で唯一、生徒単価の高い大学進学を専門とするフランチャイズ。
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